でんでんむしのかなしみの全文とあらすじ|皇后美智子様の基調講演を参考に解説|新美南吉の児童文学

新しい元号が「令和」に決まり、連日テレビや書籍で連日天皇皇后両陛下や皇室の特集がされるなど、世間の注目が集まっています。

その中でも私が最も心を動かされ感動した「でんでんむしのかなしみ」(新美南吉)という児童文学についてご紹介します。また、皇后美智子様がインドのニューデリーで行われた国際児童図書評議会の基調講演でお話された内容を参考に解説します。

宮内庁のHPに公表されている文書を参考にしました。美智子様のお言葉は、どれも私の心に響くお言葉ばかりで、心に大切にしまっていつも繰り返し思い出しています。皆様にも是非、原文を読んでいただきたいです。

➡️宮内庁のHP「第26回IBBY(国際児童図書評議会)ニューデリー大会基調講演」

でんでんむしのかなしみ全文

「でんでんむしのかなしみ」は作家新美南吉による児童文学作品です。

創作童話として1935年(昭和10年)に発表されて以降、広く親しまれてきました。

スポンサーリンク

でんでんむしのかなしみ全文

一匹のでんでん虫がありました。

ある日、そのでんでん虫は、大変なことに気がつきました。

「わたしは今までうっかりしていたけれど、わたしの背中の殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているではないか」この悲しみはどうしたらよいのでしょう。

でんでん虫は、お友達のでんでん虫の所にやって行きました。

「わたしはもう、生きてはいられません」と、そのでんでん虫はお友達に言いました。

「何ですか」とお友達のでんでん虫は聞きました。

「わたしは何と言う不幸せなものでしょう。わたしの背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているのです」と、はじめのでんでん虫が話しました。

すると、お友達のでんでん虫は言いました。「あなたばかりではありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」

それじゃ仕方ないと思って、はじめのでんでん虫は、別のお友達の所へ行きました。

するとそのお友達も言いました。「あなたばかりじゃありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです。

そこで、はじめのでんでん虫は、また別のお友達の所へ行きました。

こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、どのお友達も、同じことを言うのでありました。

とうとう、はじめのでんでん虫は気がつきました。

「悲しみは、誰でも持っているのだ。わたしばかりではないのだ。わたしは、わたしの悲しみをこらえて行かなきゃならない」そして、このでんでん虫はもう、嘆(なげ)くのをやめたのであります。

皇后美智子様のお話

この話は,このでんでん虫が,もうなげくのをやめたところで終っています。(中略)4歳から7歳くらいまでの間であったと思います。その頃、私はまだ大きな悲しみというものを知りませんでした。だからでしょう。最後になげくのをやめたと知った時「簡単にああよかった」と思いました。(中略)

しかし、この話は、その後何度となく、思いがけない時に私の記憶に甦って来ました。殻一杯になる程の悲しみということと、ある日突然そのことに気付き、もう生きていけないと思ったでんでん虫の不安とが私の記憶に刻みこまれていたのでしょう。少し大きくなると、はじめて聞いた時のように、「ああよかった」だけでは済まされなくなりました。生きていくということは、楽なことではないのだという、何とはない不安を感じることもありました。

出典:宮内庁のHP「第26回IBBY(国際児童図書評議会)ニューデリー大会基調講演」

読書は,人生の全てが,決して単純でないことを教えてくれました。私たちは,複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。出典:宮内庁のHP「第26回IBBY(国際児童図書評議会)ニューデリー大会基調講演」

➡️橋をかける (文春文庫)

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする